今回は国内ETFで銘柄選びに最も重要なことをテーマに記事にまとめます。
ETFとは
Exchange Traded Fundの略で上場投資信託と言います。
インデックスファンドと同様にTOPIXやS&P500などの株価指数に連動するように運用する目的の金融商品です。
ここで投資信託と比較したETFのメリット・デメリットを挙げます。
- ETFのメリット
1.信託報酬が低い。投資信託には販売会社に信託報酬を払う必要があるが、ETFは上場しているため販売会社への信託報酬が無い分、低コストである。
2.市場が開いている時間にリアルタイムで変動するので自身のタイミングで購入できる。
- ETFデメリット
1.分配金が自動で再投資されない。
分配金再投資するためには自分で再度買い付ける手間がある。
2.定額での購入が不可能でドルコスト平均法が機能しない。
株と同様に市場価格に対する取引単位で売買する。つまりETFの市場価格が2000円の場合、4000円で2口購入できるが、ETFの市場価格が翌月2100円に上昇している場合は、同じように4000円で投資したくても、1口しか購入できない。
3.投資信託と比べると最低購入金額がわずかに増える。
投資信託は100円〜1000円より購入可能であるが、ETFは数千円から銘柄によっては数万円必要。
4.売買手数料がかかる。
近年、証券会社によっては売買手数料無料としたETFを取り扱っている。また上場株式の手数料改善がされ、1日の約定代金100万円まで無料となっている証券会社もある。
以上をまとめるとデメリットの3,4に関しては、気にする程度ではないですし、少しの手間をかけることで低コストで運用できるということがわかると思います。
以前記事にした投資信託を選ぶ基準で取り上げた信託報酬、純資産総額を考慮した上で、本題である国内ETFの銘柄選びに最も重要なことを解説します。
出来高と流動性
最も重要となるのは出来高および流動性です。
- 出来高
出来高とは成立した売買取引数量のこと。
ETFは株と同様オークション方式のため、売り注文と買い注文の価格が一致しないと取引は成立しません。
そのため出来高が少ない銘柄というのは、売買する人が少ないということが考えられ、ETFのメリットでもある自身の買いたいタイミングでの取引ができないことにも繋がります。
- 流動性
流動性とは金融商品が売買成立しやすい状況であるか否か判断する指標。
価格ごとの売買注文数である気配値(板情報)を用いて判断するとわかりやすいので流動性のある銘柄と流動性のない銘柄2つの例をあげて、説明します。
白い囲いが価格。赤い囲いが売り注文数。緑の囲いが買い注文数。黄色い囲いが出来高として表示されています。
最も安い売り注文価格1274円と最も高い買い注文価格1272円の差をスプレッドと言い、このスプレッドが小さいほど流動性があるということを示しています。
それでは流動性のない銘柄はどうでしょうか。
この銘柄のスプレッドは65円と価格幅が大きく、明らかに流動性のない銘柄といえます。スプレッドの広さを流動性コストと呼び、信託報酬の安いETFも流動性のなさから、無駄なコストがかかってしまうのです。
また売り注文および買い注文それぞれの取引可能な注文数量をデプスといい、4100円では20株までしか購入できないため、デプスの大きさも流動性に影響を与えます。
2例目にあげた銘柄は1313:サムスンKODEX200というETFで時価総額が6066億円、信託報酬も0.15%とインデックスファンドでは十分な合格ラインです。
しかしETFの売買取引において出来高と流動性の観点から、投資対象としては選びにくい銘柄であることがわかりました。
以上の点からETFは信託報酬と純資産総額を考慮した上で、出来高および流動性を重要視する必要があるのです。
米国ETFと比べると国内ETFの規模は小さく、数年前までは流動性のある銘柄が少なく、国内ETFはあまり注目されていませんでした。
しかし、2018年7月より国内ETF市場にマーケットメイク制度を導入し、取引環境が改善されました。
マーケットメイク制度
銘柄ごとにマーケットメイカーを指定し、指定を受けたマーケットメイカーは、気配提示義務を履行することで、インセンティブ(報酬)を得ることができます。マーケットメイカーが気配提示義務を履行することによって、対象のETFに対して、需給動向を踏まえた公正な価格で、十分な量の気配が提示されることになり、投資家の皆様が売買をしたいタイミングで、より良い価格で売買する環境を提供できるようになります。
日本取引所グループ:マーケットメイク制度の概要 より引用
簡単に述べると、マーケットメイカー(国内外の証券会社など)が報酬をもらう代わりに常に売買注文を出し続け、流動性を向上させるための制度
現在234銘柄のうち139銘柄のETFがマーケットメイク方式を採用し、今後もオークション方式からマーケットメイク方式へ移行する銘柄が増えることが予想されます。
出来高と流動性の重要性を理解すれば、自ずとマーケットメイク制度が採用されたETFを選択することになるでしょう。
ちなみにマーケットメイク制度対象銘柄については、日本取引所グループの公式サイト内で確認できます。
まとめ
国内ETFを選ぶ際に最も重要なことは
出来高と流動性。
例え、純資産総額が大きく信託報酬が低くても、出来高と流動性が伴わないETFも存在し、流動性のない銘柄では市場の流動性コストが掛かり、パフォーマンスが低下してしまいます。
しっかり板情報を確認し、流動性を把握しましょう。
ETFは投資信託と違い、定額で自動積立によるドルコスト平均法が活用できないというデメリットがありますが、投資信託よりも信託報酬が低く、長期投資においては手間をかけてでも、コストを抑えることでより良いパフォーマンスを出すことができます。
また2018年7月より、マーケットメイク制度が導入され、流動性が向上し、ETFへの投資が行いやすくなりました。
つみたてNISAを満額積み立てて、更なる投資先を考えているならば、ぜひETFの検討をしてほしいと思う。